15時間目 「不妊と東洋医学」ここ最近、少子化という言葉をよく耳にします。国や各地方自治体などで盛んに少子化対策を行なっていますが、現状はなかなか難しいようです。少子化は、女性の高学歴化が進み、男女間の給与所得の格差が小さくなったことにより女性が職場を離れることが、=生活水準の低下=につながるようになりました。結果として晩婚化・未婚化が進み、初産年齢がそれに伴い上昇し、少子化が進んできたと言われています。そして、出産年齢が高まるということは、からだのエネルギー、妊娠するパワーが少なくなり、不妊に悩む方も増えてきたのではないでしょうか? 不妊の定義は「妊娠を希望して、避妊等をしないで2年以上妊娠できなかった場合」とされています。現在、不妊に悩む女性は10人に1人といわれています。また1999年には、不妊治療者の大規模な調査が行われ、厚生科学研究費補助金厚生科学特別研究報告書「生殖補助医療技術に対する医師及び国民の意識に関する研究」が出されました。その推計によると、不妊治療を受けている患者は、284800人(排卵誘発剤の使用;165500人、人工授精;35500人、体外受精;17700人、顕微受精;14500人、その他;51600人)です。日本産科婦人科学会の報告では、1998年中の生殖補助医療による出生児数は、11119人であり、1988年から2000年にかけて、47591人が誕生したとされています。 では、今回のテーマ、東洋医学と不妊について勉強してきましょう。 東洋医学では、不妊のことを不孕、絶産、絶子、無子などといい、古くからその存在がありました。古典では、人間の一生における肉体の変化は、「腎気の盛衰」によると考えられています。「腎気」とは、「腎精」ともいわれ、腎にある精気をいいます。腎気は両親から受け継いだ「先天の精」と食事などにより生じた「後天の精」からなり、両方の精はお互いに助け合い、人体の成長・発育を促進し、さらに生殖能力を形成するという大切な任務を担います。また、妊娠と関係が深い月経に対する考え方も古典に記載されています。月経は、月事、月信、月水、月行ともいわれます。月経は、腎気が盛んになって「天癸(てんき)」が至り、「任脈(にんみゃく)」と「衝脈(しょうみゃく)」が盛んになることで定期的に訪れると考えられています。「天癸」とは生殖機能の成熟を促す物質で、腎精が一定まで充満すると生じる産物です。また、「任脈」の「任」は妊娠や生育の意味があり、陰脈の海ともいわれます。身体の前面の中心にある経絡で、子宮から始まり、顎先で終わります。「衝脈」の「衝」は要衝の意味があり、全身の要衝に位置します。全身を流れている12経絡の気血を調整しているので、「十二経の海」ともいわれています。子宮から始まり、腎の脈と交わり、咽で終わります。結局、腎気が盛んであることがまず正常な月経に必要なことであり、腎気が妊娠や不妊に関係が深いと考え、腎気の不足を不妊の原因の第1と考えます。 さて、実際の不妊の代表的な原因を挙げていきます。まず、気を中心とした問題である腎虚、肝鬱、血・水を中心とした問題であるお血、痰湿に分類されます。 @腎虚 女性は7歳ごとに身体が変化していくとされ、「7歳で腎気が盛んになり、歯が生え替わり、髪が長くなる。14歳になって腎気が盛んになって月経が定期的にあり、子どもを作ることができる。そして、28歳が最も体が充実している時期で、49歳になると腎気が衰えて、月経がなくなり、子どもが作れなくなる」とされています。このように、腎気は生命現象の基本であるため、腎精が不足すると、身体および生殖器の発育不全、生殖機能の異常、生命力の低下、老化の早期化などが起こります。 A肝鬱 精神的ストレスや怒り、長期の鬱々とした気分などが要因となって、肝の疏泄機能が阻害されて起こります。肝は「血を蔵す」というように、血と深い関係にあるので、気が阻滞して気血の流れが上手くいかず、任脈・衝脈の働きが悪くなることによって、月経異常、無月経、無排卵などが発症します。 Bお血 お血は血の流れが上手くいかず、起こります。原因として気滞や気虚、長期の寒冷、外傷により血の阻滞があります。腹部の深いところのお血は婦人科疾患と密接な関係があります。おへその周囲に硬い塊や痛みがある場合、足に静脈が浮き出ている場合もお血がある確率が高いです。自分で舌の色、歯茎が紫色になっているかどうか見てみるのも良いでしょう。お血では、月経不順、月経前症候群、無月経などが起こります。 C痰湿 肥満体質の方や胃腸機能の低下している方が過食することにより、余分な水分(どろどろした水)が子宮をはじめ全身に滞り、任脈・衝脈の気血のめぐりが低下し、妊娠しづらい状態です。 以上のような4タイプの原因がありますが、これらは高度に組み合わさり、複雑な病態を作ります。まずは、何が過不足なのか、どの部位に問題があるのか、いつ頃からの問題なのか、などすべての情報を収集した上で、治療を始めていく必要があります。 そして、忘れてはいけないこと、それは西洋医学と手を合わせ治療していくことです。現在、不妊で鍼灸治療院を訪れる患者様は、大部分が産婦人科などで検査、治療を受けています。そのため、器質的な原因か機能的な原因かが比較的わかりやすくなっています。機能的な問題では東洋医学の効果はある程度望めるが、器質的な問題では全くといっていいほど効果が認められないといわれています。お互いが協力して役割を十二分に果たすことでうれしい妊娠をお手伝いしましょう。 |
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