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11時間目 「鍼灸の体への作用」



 東洋医学には副作用がないと紹介されていますが、効果があるものは、必ず副作用があります。効果だけ望めるなんてそんな都合のよいことは存在しません。たとえば、三陰交というツボは血を補い、水の流れをよくしますが、堕胎のツボとして有名です。また、マッサージなどによる過剰な刺激はもみ返しがおこることもあります。しかし、効果を最大限生かし、副作用を極力小さくすることはできます。それは我々施術者の能力次第といえるでしょう。
 今回のテーマを一緒に考えることによって、鍼灸の作用、反作用を知ってもらい、上手に日常生活に取り入れていってほしいと思います。では、はじめていきましょう。

 鍼灸治療は代替医療(補完医療)として、世界中で注目されています。一体、何が魅力で注目されているのでしょうか。鍼灸治療の魅力に触れていきましょう。
 WHO(世界保健機構)では、「伝統医学とは、現代的医学の確立およびその普及以前に存在した考えに基づいた治療法で、かつ今日においても実践されているものの総称」と定義されています。中でも鍼灸治療は、100疾患以上に効果があると定義しています。たとえば、腰痛、肩こり、顔面神経麻痺、メニエール病、気管支喘息、不妊症、生理痛などです。
 現在、鍼灸治療で用いる経絡、経穴は現代科学では解明することができていません。そもそも、現代医学は科学によって発達しました。人の体を科学的に解明してきたのです。それとは対照的に東洋医学は長年の経験によって発達してきました。そこから見出された経絡、経穴は科学的な解明は難しいのではないでしょうか。ある先生は圧痛点、過敏点、皮膚電気抵抗低下点などと述べていますが、多くの研究により未だ解明できていないのが現状です。人類は自然を簡単に破壊することができますが、自然を元に戻すのは容易ではありません。つまり、人類が自然を理解できないのと同様に人の体(自然の一部)を理解できないのは当然でしょう。
 鍼灸治療の実際をみていくと、西洋医学的に用いる先生、東洋医学的に用いる先生、または自分なりの理論に基づいた○○流という先生がいます。西洋医学的には「どこどこの筋肉が凝っている」とか、「膝が痛いから、膝に刺す」という方法を用います。現代医学と同様、局所を治療します。また、東洋医学的には「体の気、血のアンバランスやどの臓腑に問題があるか、どの経絡に問題があるか、体質はどうか」などというように体すべてを把握し、体中にあるたくさんの経穴を選び、治療していきます。西洋医学とは対照的に全体を把握し治療してきます。両者とも必要な治療法ですが、目的にあわせて行なう必要があるでしょう。
 実際、病院での治療でよくならず、東洋医学に駆け込んできた患者様と鍼灸の副作用がみられた患者様を追っていきます。
 ○○様は年齢31歳、女性。顔中に赤みを帯びた湿疹がみられます。中医学的に体質や症状をみていくと、全体的に気が不足し、冷えが下半身に集まり、逆に熱が上に溜まっていました。気は体の循環をコントロールする重要な物質であるため、冷えと熱のバランスが崩れていたのです。また、元来、肺が弱いため、肺が支配している皮膚に症状が表れやすくなっていました。そこで、鍼灸を用い、気を補い、気のめぐりを良くし、上部の熱を取り去る治療をしました。すると、治療した日から顔の赤みが減り始めました。現在、5回ほどの治療により、顔の湿疹はほぼ改善されました。しかも、胃腸の調子も良くなり、生理痛も無くなりました。○○様は湿疹の治療できたのに、なぜ、生理痛にも効果があるの?と驚きを隠せない様子でした。
 鍼灸治療は、局所の治療と全身の治療を同時に行なうことができます。湿疹の改善はもとより、体のバランスを良くするので、生理痛の改善も当然あります。しかし、最初の診察で誤った判断をして、ツボを選んでいたら治療初日の治療効果はみられなかったと思います。熱をとる治療であるのに、熱を補っては正反対の治療になるので、湿疹は悪化し、赤みも減らなかったでしょう。
 次に、11月頃にぎっくり腰で来られた35歳、男性の場合です。整体院さん(*)で腰をほぐしてもらったそうです。すると、その日は痛みがなく、絶好調でしたが次の日の朝起きることができなかったそうです。当院に来た時、まともに歩くことができず、ベッドに横になるのも辛そうでした。この方は、体質的に体に余分な水が溜まりやすく、雨の日や梅雨時に体調が悪くなるそうです。しかも、今回のぎっくり腰の直前、仕事で池の中に入ったそうです。これは、明らかに体の余分な水分が急激に冷やされ、気・血の流れが阻害されたのでしょう。中医学では、「不通即痛」という言葉があります。通じなければすなわち痛むという意味です。多くの腰痛の方はマッサージによってある程度改善しますが、しっかりとしたカウンセリングをして治療を行なう必要がありました。今回の治療は、痛む腰には刺さず、腰を巡っている経絡(ツボの流れ)を用い、流れを回復し、体から冷えを取り除きました。すると、帰りには痛みはほぼ無くなりました。
 このように、ちょっとした判断で症状が改善されない、もしくは悪化する場合があるのです。良い治療院かどうかはカウンセリングにかかっていると思います。丁寧にお話を聞いてくれる治療院探しをしてみてはいかがでしょうか?


*整体師:厚生労働省による認定を受けていない者。つまり、鍼灸師、看護師などの医療従事者では
ない。学ぶスクールはあるが、3ヶ月程度で体得できるものもあるらしい。
基本的医学知識の乏しいものであると推定される。
*マッサージ:本来、マッサージという名前は、あん摩・マッサージ指圧師の国家資格取得者のみが
名乗っていいもの。しかし、アロママッサージや足裏マッサージなど大部分で無資格者が行なって
いる。現状では厚生労働省で取り締まることは不可能な状態である。



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